
名古屋の祖母が使わなくなったミシンと洋裁道具をいただいた。
名古屋といえば、ミシンはブラザーと相場が決まっている。

祖母が長年愛用していたミシンは調子が悪くなり、新しくコンピューターミシンを買い求めた。ところが新しいミシンをうまく使いこなすことができずに洋裁はやらなくなり、ほとんど使わないまましまわれていたというお品だ。
いずれ、時間ができたら練習して使ってみるつもりだ。
ミシン台は状態に難あり
ミシンは宅急便、ミシン台は家財便で運んでもらった。
ヤマトの家財便は、電話での連絡に限り、前日18時までの申し込みで翌日引き取りに来てくれる。
引き取り前に自分の目で状態を確認したところ、テーブル部分に「穴」が開いているので驚いた。

古い物だから、当然新しいミシンとは形が適合していない。
初めてのミシンなのにテーブルがこのような状態でどうしていいかわからないが、これは後々考えることにする。
引き出しの中身
引き出しの中にぎっしり資材が入っていた。中身は取り出して宅急便で送った。
ミシン糸の謎

フジックス、シャッペスパンミシン糸がたくさんあった。私もフジックスの手縫い糸をよく使っている。
手持ちの見本帳に在庫をチェックして印をつけておいた。こうしておけば後で探しやすいだろう。

明るい、派手な色が多かった。
年齢のせいだろうか。私の方が、ずっと地味好みだ。
かなり古びたものもあったが、シャッペスパンは劣化しにくいポリエステルの糸だ。使用には問題ないだろう。
昔、祖母とソーイングの話になったとき、なにかを補修するのに糸をきれいに引き抜いて針に通し、同じ糸を使って縫い上げたと聞いたことがある。
糸巻きに別の糸が巻いてあるものを見て、糸を大事にする祖母らしいと感じた。
タイヤー絹ミシン糸がいくつかあり、これは何に使ったのか、母に訊いてみたところ……
「昔はミシン糸はみんな絹だったんだよ。私が洋裁学校に通っていた頃にはもうシャッペスパンが登場して入れ替わっていた時期だったけど……。それは相当古いものだから劣化してるかも。使わない方がいいかもね」
レジロンニット糸は、普通のミシンにセットして使用する少し伸びのある糸だ。
それとは別にロックミシンの糸(ハイスパン#90)もあった。祖母はロックミシンなんか持っていなかったはずだが、友だちから借りるとか、貸しミシンでも使うことがあったのだろうか。
ピンク色のデニム用の糸は母曰く「バッグとか小物でも縫ったんじゃないの」
もう一つ、謎の糸があって、木製の糸巻きに巻かれた透明白色の釣り糸のような極細の糸だ。これは電話で訊いてもわからなかったので、次に母と会うとき、見てもらうつもりだ。

一生使えるほどの針

『本みすや針』と書かれた箱に大量の針がぎっしり詰められていた。
おなじみのクロバーの針もあるが、あとは古いものばかり。ほとんど和裁用だろう。「きぬぬい」なんてたくさんあるけど、なにかの景品でもらったりしたんだろうか。「もめん」と書いてあるのは普通に使えそう。
中身を開けてチェックすると銀紙が多少劣化している程度で、ほとんどの針は錆もなくきれいな状態だ。
後述のソーイングセットの針と合わせ、もう一生買わなくてもよさそうなぐらい針がある。
ソーイングセットも大量に

一番下の引き出しに、「太陽生命」の社名入りのニードルセットがいくつもあった。「ムーンリリー」の商標が入っている。
手縫い用の針、マチ針、大くけ針、紐通し、糸通し、シャツボタンがセットになっている。このうち、糸通しはいくつかなくなっていた。
また、中央のパーツが全てなくなっていたが、後からムーンリリー印の補修糸が出てきた。どうも補修糸はほとんど全て使ってしまったみたい。
手縫い針や糸、糸通しなどはこのニードルセットから取って便利に使っていたようだ。
ソーイングセットはこの他にもいくつもあって、色糸はボタンつけなんかに使っていたんじゃないかな。
ダルマ家庭糸の太口も、ボタンつけ用だろう。右側のボタン付け糸は今も同じものが販売されている。

資材(金具類)
スナップボタンやスカートのホックが大量にあった。
スナップを用途ごとに使い分けるのは理解できるが、ホックなんかこんなに買い溜めして、きっとスカートやパンツを何枚も作ったのだろう。
古い洋服を捨てるときに外して取っておいたらしき金具も見受けられた。

『二人静』と書かれた丸い箱は名古屋の和菓子店、両口屋是清のもの。今も変わらず同じ絵柄で販売されている。中身はどうやら和三盆の干菓子だったみたい。
祖父母の家では、こういうお菓子やサプリメントの空き箱なんかが至るところで活用されていた。
スナップが入っていたのはセルロイドらしき半透明の箱。こちらもなんだか可愛らしい。
若き日の祖母の感性がしのばれる。

ベビーアイロン(ミニアイロン)

松下電器製・平成8年購入と書いてあるから、なんと22年前のもの。
一応持ち帰ったところ、これが、すご〜〜く便利だった! ぬいしろの始末なんかをするときに小回りが効くからいいのだ。小さいので、すぐに熱くなる。
値段を調べたら意外と高価なものとわかり、大事に使っている。
これが壊れたら次はクロバーのを買うつもり。
その他の小物
古いブラザーのミシンの備品。おさえ金だ。これは……今のミシンではもう使えないだろうな〜。

ミシン針や、和裁に使用するかけはりという道具。
各種指貫。


補修針はなにに使ったんだろうか?
ポケットの形をつくるための定規。そでぐりなどのカーブにぬいしろを付けるためのステンレスの定規。クロバーのピンセット、へら、鳩目パンチ、ものさし2本。竹のものさしには名古屋車道にある「大塚屋」の値札が貼られている。こういうものは今も使えそうだ。
一応全て取っておくが、使わないものは追々だれかに譲ったり、手放していくつもりだ。
所感
祖母は編み物を得意としていたと聞くが、道具を見る限りでは洋裁もかなりやっていたようだ。
10年ほど前、私が名古屋に遊びに行ったときに、マリメッコのエプロンを祖父母それぞれに贈った。
祖父のものは私の手元に戻り、なにげなく裏を見たところ手縫いの跡が見えた。スリムな人だったから、体の幅に合わせて祖母が直したのだろう。表の柄の色に合わせてわざと何色も糸を変えて縫っている。
こういうところ、実に細やかだ。
なんでも自分たちが使いやすいように工夫し、手を加えるのを厭わない人たちだった。
洋裁は祖母にとって趣味であり、実用であり、そしてその細やかさで、生活の隅々まで気を配って暮らしやすいように工夫していたのだと思う。
元気なうちに、もっといろいろ聞いておけば良かったなー。
祖母は数年前認知症で施設に入り、コロナ禍では自由に面会もできない。それでも今度会うときには、どんなものを作っていたのか、洋裁のことなんかも少し訊いてみたいと思っている。
追記:このとき「なんで1巻ずつなんだろう?」と疑問だったが、母が言うには、「ジグザグの始末なんかに90番を使ったんじゃない?」とのこと。家庭用ミシンで使っていたのか。糸立ては見つからなかったけど、別に持っていたのかもしれない。