初めて訪れた『半・分解展』。夕方で混んでるかなーー?と心配したが、お客さん、みなさんお行儀がよかった。1hほどかけてゆるりと見学しつつ、気になるものを1着ずつ試着させてもらった。
この記事では、洋裁初心者の目線で試着した感想を紹介する。
なお、展示についての正確な情報は、主催者・長谷川彰良氏のウェブサイトにてぜひお読みいただきたい。
《ユサール》
もとは軽騎兵の軍服であり、剣や槍を装備して身軽に闘うための服だ。
胴体に付けた硬い紐状の装飾(ロシアンブレイド)によって、内臓を守る機能がある。
実物を一目見て、この紐の装飾に惹きつけられた。《ロシアンブレイド》と言うからにはロシア由来の技法なのだろうか。私はむしろ、チャイナボタンや《アジアンノット》の類いを連想した。
硬い紐を幾度もねじり、均等に同じ形を作っている。
長谷川さんの作品では淡いグレーの身頃にチャコールの紐の組み合わせ。色に強弱をつけることによって装飾が際立つ。襟の補強やカフスの装飾も工夫されて美しい。
羽織ると、思ったより軽い。
ロシアンブレイドでガッチリ固められたコルセットのように感じる。男性の胸部の厚みに合わせ、自然なカーブを描いている。
縫製にも魅了された。
裏側までひっくり返して見、アームホールの内側にヒダがあるのでこれはなんだろう……と思ったりした。
胸ポケットや背面の装飾までばっちり決まった作品だ。
どの作品も、ヴィンテージから取った型紙に対して、装飾の方法を工夫されているところがまたすばらしいと思う。
《ストームコート》
次に試着したのが《ストームコート》。
トレンチコートと似ているが、もっとゴワゴワした硬い素材でできている。いかにも軍用という感じ。
着てみると……たっぷりしたスカートが素敵で、スタイルよく見える気がする。
前側の合わせにスナップがあるのに、左右の凹凸が合わなかった。
なぜだろう?と混乱したが、着用画像を見たらわかった。前と裾とを留めつけ、下半分はズボンのようにして着るものだったのだ。
普通のボタンでない以上、ベルトでギュッと締めるか、おしゃれ着としては開けて着るのが正解だろう。
私の今の実力ではコートを縫う自信はないが、いずれ、腕を磨いて挑みたい。
Twitterでこの型紙から柿色のコートを作って画像をあげている方がいて、カッコよかった!
隠し袖の《ヴィジット》
長谷川さんをフォローするキッカケとなった《ヴィジット》。
19世紀に流行した円形に広がるスカート(クリノリン)に合わせて作られた上着で、マントのような、着物の《羽織》のような形をしている。
腕が動かしにくい形が特徴で、上流階級の婦人向き。
要はすべてお付きの人がやってくれるため、自分では手を動かす必要がない人向きの上着なのだろう。
隠し袖が付いたヴィジットもあり、こちらは手を動かしやすく、ポンチョやマント同様の着心地であった。
長谷川さんの作品は、裾に付けたフリンジ飾りがシルエットを強調し、横から見た姿も優雅で美しい。
私だったら、あえて飾りは付けずに、シンプルな曲線の美しさを楽しむかな〜〜?
こちらもぜひ作ってみたいと思う型紙だ。
展示品はコードを編んだレースの飾りで縁取られていた。このような飾りがこの時代に流行したのだろう。
《ヴィクトリアン・ラップ》の胸にも同様のレースが付けられていた。
《ヴィクトリアン・ラップ》
友人が「着たい」というので注目していた展示品だ。
前が長いボレロのような形で、肩や後ろ側の面積が小さく、肩に引っかかっているだけといった感じ。防寒用というより装飾用の肩掛けに近いだろう。
少し動いたらズレてしまいそうで、実用性はなさそう。しかし、興味深い上着だ。
本体はベロアで、裏は絹になっている。コードレースで縁取られ、前側の裾だけリバーレースのようなものが縫い付けられている。
似たようなレースを入手することができれば、私でも再現できるかもしれない??
ヴィンテージ靴
えすとえむ先生の作品に靴作りの工房の話(IPPO)があったが……靴の型紙なんて、初めて見た。
こうなっているのかーーーー!!
穴飾りがあるウィングチップは大好きな形だ。
今の靴と比べて相当にワイズが細いようだ。昔の人は足が小さかったのか。それとも現代人が歩かなくなって、扁平で広がった足になっているのか……。
サックスブルーの《アビ・ア・ラ・フランセーズ》
18世紀上流階級男性の正装だそうだ。こちらはヒップをわざと短くしためずらしい形。
生地は絹だろうか。サックスブルーの織地に細かい模様が入っており、まるで着物の小紋みたい。
ポケットの内側はどうなっているのかめくってみたら、ボーダーの柄が貼ってあった。
非常に保存状態のいいお品だ。
こちらが見つかり、長谷川さんが連絡を受けたときの感動をコミカルに書いたエッセイが掲示されており、読んで、ふふっとなった。
展示品には一つ一つ長文の解説文が添えられ、こちらをじっくり読むのも楽しかった。
こうした時代考証はつねに情報がアップデートされて上書きされていくものだろうから、次に来たときは内容が修正されているということもあり得る。
いくつか写真を撮らせてはいただいたものの、冊子としてまとめて読めるようになったら、もっとうれしい。
出版化、待ってます。
感想
「100年前の服の魅力を広く伝えたい」という志から、貴重なコレクションを惜しみなく公開し、見物客に自由に触らせ、着てよし、写真を撮ってよし、SNSへの公開もOKというユニークな展覧会。
しかも、1枚のチケットで会期中は何度も出入りできる。
主催の長谷川さんは常駐されているようで(一体お昼ごはんはどうされているのだろう?)忙しく歩き回り、見物客に説明してまわっていらっしゃった。
風変わりな乗馬用スカートの着方の実演も見せていただき、おもしろかった!
情熱的で、かつ、ユーモアもあり、まだ30歳ぐらいとお若くて、この先の活動が楽しみな方だ。
ぜひ、また時間を見つけて『半・分解展』を訪れたい。
半・分解展
- 期間:2021年4月13日〜26日
- 時間:13:00〜20:50
- ※18(日)、25(土)は11:00開場
- ※21(水)、22(木)は19:50閉場
- ※26日は17:00 閉場
- 会場:渋谷区文化総合センター 大和田
- 住所:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町23−21
- 入場料:Web 3,500円、現金4,000円
- 展示期間中の再入場無料 中学生以下の入場無料
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素敵ですね✨
1枚1枚が美しい…
ジョビーさんのセンス、こういった美しい服を見て磨かれているのですね😃
洋服は作るだけでなく、良い物、素晴らしい物を見て学ぶ事も大切なのですね✨